【ミヨチャンと10 円玉】
ミヨチャンという知的障害がある女の子が広島の施設にいました。
その施設を卒業するには、1円玉・5円玉・10円玉・50円玉・100円玉・500円玉の価値の違いを言う卒業試験がありました。
知的障害の子でもお金に騙されないように、先生方がそんな試験を考えたのです。
普通は2、3年で卒業できるのに、ミヨチャンは7年経ってもまだ卒業できません…
試験にパスできないからです。
毎年、卒業試験で先生が
『ミヨチャン、この中で一番価値のあるお金はどれですか?』
と、聞くと
ミヨチャンは必ず10円玉を握ってしまいます。
先生が
『何でいつも10円玉しか取らないんだ!?この中で一番価値のあるのは500円玉だよ…このままでは、いつまで経っても卒業できないよ!!!』
と怒っても、意味のわからないミヨチャンは泣くばかり…。
そして、何回やっても10円玉を握ってしまいます…。
(自分達の教育が間違っているんじゃないか…)
先生達は悩んで色々話し合いました。
そして、ミヨチャンの事をもっと知ろうということになりました。
調べてみたら、ミヨチャンの小さい時、お母さんは亡くなっており、お父さんは体が弱くて入院してました。
ミヨチャンは親戚の叔母さんの家に預けられていたのです…
ミヨチャンの楽しみは…
毎晩10円玉を持って赤電話に行き、病院のお父さんに電話をかけること…
それが…
ミヨチャンにとっては一番素敵で…
価値のあることだったのです。
それを知った先生方は、それまでの試験のあり方に後悔しました。
ミヨチャンにとって一番価値のあるのは、
500円玉ではなく10円玉だったのです…。
ミヨチャンは最後の最後まで10円玉を握ったまま卒業していきました。