師匠の背中

samuraihair

2009年02月10日 13:54

ワシの師匠は、

非常に細やかで、丁寧な仕事をする。


ワシの師匠は、

絶対に人の悪口や、陰口を言わない。










ある日の、昼下がりの午後…



お店のドアが開いた、



「いらっしゃいませェ〜!!」



(あれ…ッ!?)



入って来られたお客様は、午前中にカットしたはずの、中学生の男の子だった…


お母さんに連れられて、バツの悪そうな顔をして立っていた…



『ここのお店は、こんなカットをするんですか!!!』



と、凄い剣幕のお母さん…


男の子の髪を見ると、午前中に綺麗にカットされた髪は無惨な姿に…



明らかに、師匠のカットのままではない…



『こんな酷いカットして!!!ちゃんと直して下さいッ!!!』



お母さんは、怒鳴り散らした…



(い、いやッ…でも…絶対に後で何かしとるじゃろぅ…)



僕らがマゴマゴしていると、



師匠の奥さんが、少しムッとして



「スイマセンが…コレはウチのカットじゃぁ…」



と、言い終わらないうちに


「どうぞぉ〜スイマセンでしたぁ!!!」



優しい声で、師匠



チョキ♪チョキ♪チョキ♪と、綺麗に直していった…


その間ずっと文句を言っているお母さん



そして、綺麗に仕上げて



「スイマセンでしたネ!!また来て下さいネッ!!」



と、爽やかな笑顔で見送った…



後片付けをしている師匠は、特に何も言わない…



スタッフル−ムでは、師匠の奥さんが目を真っ赤にして泣いていた…



「悔しいッ!!!ウチの旦那は、絶対にあんな仕事せんッ!!!


じゃけど…あの人が、何にも言わんのんじゃけぇ…ウチが言えるはずがないッ!!!」





その中学生の男の子の髪の切られ方からみて、誰かにやられたんじゃろう…



イタズラかもしれんし、



イジメられたのかもしれん…



中学生くらいの男の子じゃったら、それを言いたくなかったんじゃろうけん、



結果、師匠のせいになったんじゃと思う…



師匠は、そこまで考えて黙ってカットしたんじゃと思う…



で、その中学生の男の子が、



又、来やすいように笑顔で見送ったんじゃろう





師匠は、何も言わない…





けど…





師匠の背中をみて育った僕ら弟子達は、





そんな師匠を誇りに思っています…

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